いま、俺の好きな子が目の前で弁当を食べています。いま、俺の好きな子が玉子焼きを口に放り込みました。いま、俺の好きな子が「光も欲しいの?」と聞いてきました。いま、俺の好きな子が「じゃあこれならあげる」とからあげを1つくれようとしました。
でも、俺は素直じゃないから。
「そんな庶民の食べ物お口に合いませーん」
「ならまじまじとヒトの弁当見るのやめて下さーい」
「ばっ……つーかちゃんって自信過剰デスカ?」
「光くんの自信過剰ぶりには負けますけどね」
いま、俺の好きな子が廊下を見ています。いま、俺の好きな子がすごく嬉しそうな笑顔で廊下を見ています。いま、俺の好きな子が廊下にいる鏡夜センパイを見ています。
「鏡夜先輩って、彼女とかいるの?」
「……なんで?」
「んー?光には絶対に教えませーん」
できれば
知りたくなかったこと
いま、俺の好きな子の瞳に俺は映っていないということ。
(ずっと、かもしれない)
(071005)